きくへい
@KikuchiKohei
2026年1月25日
読み終わった
圧倒的力作っ!
読みながら、著者に拍手を送りたくなる瞬間が何度もあった。
様々な議論を呼ぶケニア人ランナーという題材を、本作は問題点や軋轢だけでなく、その功績や一人ひとりの人間性も含めて丁寧に描き出している。とりわけガル高校について掘り下げた章は圧巻で、限られた情報を丹念に積み上げ、構造を明らかにしていく過程には、ミステリーを読んでいるかのような快感がある。清濁を合わせ飲みながら、なんとかケニア人ランナーを日本に送り込む仕組みを確立させていく様子が伝わってくる。
本作を貫いているのは、ケニア人ランナーも一人の人間であり、一人の学生であり、それぞれに人生や生活があり、駅伝に勝つための道具ではない、という極めて当たり前の視点である。しかし、その当たり前が、日本の駅伝文化や教育の現場では長く後景に追いやられてきたのではないか、という問題意識が本書の核にある。
アフリカ人ランナーが先頭を走っているにもかかわらず、テレビ中継のカメラが後方を走る日本人ランナーばかりを映す。これは日本のマラソン中継ではおなじみの光景だ。アフリカ人ランナーを特別な存在として、他者として、桁違いのものとして認識し、日本人の中だけの勝負に閉じてしまっていたことが、日本陸上界の低迷を招いてきたことは明らかだ。ケニア人ランナーの人生や人間性を知ることが、彼らを我々と同じ存在として感じることにつながり、それこそが陸上界の発展に必要なのだという提言を、本書は行っていると受け取った。

