
トロ
@tontrochan
2025年11月11日
AX アックス
伊坂幸太郎
買った
読み終わった
『グラスホッパー』『マリアビートル』に次ぐ殺し屋シリーズの続きが読みたくて買いました!最強の殺し屋【兜】は、自宅では恐妻家。奥さんが怖くて夜食にカップラーメンも食べられません。包装を破く音、お湯を注ぐ音、麺を啜る音、どれで奥さんが起きて怒られてしまうか分からず、魚肉ソーセージを小動物のように食べるのです。この掴みの導入は、なかなかどうしてクスッとさせられます。
殺し屋という非日常的な設定でありながら、「夫であること」「父であること」という、とても日常的な役割を描いた作品です。兜は仕事では完璧ですが、家庭では不器用で、前述のカップラーメンを息子の【克己】が食べていると「そんなものばかり食べるんじゃない」と言いたいのに、そこに奥さんがいたら「じゃあ私にもっとちゃんとしたご飯を作れって言いたいの?」と言われる気がして、しいては自分が殺し屋をしているせいで家族を不健康していると責められる気がして言い出せません。もっと強く出てもいいのに、と克己に言われるシーンがありますが、読者の大半もそんな気持ちになるのではないかと思います。そしてこんなシーンが山ほどあるんですから、そのギャップが、物語に静かな緊張感を与えてくれます。それが一種の中毒のように、次へ次へとページをめくらせるのです。合理的に考えれば正しくても、人としては選べない道がある局面があり、そのとき兜は、効率ではなく、感情や信念に従います。そこに、この作品の核があると思います。また、強さとは何なのか。敵や障害を倒す力ではなく、守ろうとする意志。従うことではなく、自分の基準で決めること。人にはそれぞれ理由があって、今この場にいる。数多の選択の果てに、この道を選んだこと。それが後半、えも言われぬ爽快感となって気持ちの良い読了感に包まれました。人の縁ってこんな形で繋がるんだ、と優しい気持ちになれた気がする一冊です。

