カミーノアン "消滅世界" 2026年1月29日

消滅世界
消滅世界
村田沙耶香
「私たちは、全員、世界に呪われている。世界がどんな形であろうと、その呪いから逃れることはできない。」 この小説の恐ろしさは、異常な世界が描かれていることではない。その世界に、人間があまりにも自然に、違和感なく順応してしまうことだ。 本能、家族、恋愛、生殖。普遍だと思われてきた概念は、世界の前提が変わるだけで静かに書き換えられていく。人間の本能は一貫しているようでいて、実は驚くほど柔らかく、未完成だ。 「洗脳されてない脳なんて、この世の中に存在するの?どうせなら、その世界に一番適した狂い方で、発狂するのがいちばん楽なのに」 かつての「正常」は、現代から見れば「異常」。そしてこの物語では、その逆転が暴力ではなく、合理と善意によって進んでいく。 「世界で一番恐ろしい発狂は、正常だわ。そう思わない?」 第3部で描かれる、主人公夫婦が実験都市・千葉の「ヒト」になっていく過程は圧巻だった。その静かな変化をここまで冷静に描くからこそ、私たちが生きているこの「正常」は、本当に物語の外にあると言えるのだろうか。
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