Moonflower "朝と夕" 2026年1月31日

朝と夕
朝と夕
ヨン・フォッセ,
伊達朱実
【感想】 ノルウェーの寒村の、ある漁師の誕生と逝去、その当日を描いた一作。 中編程度の長さで、文体も簡素で簡潔な、余白と繰り返しの多いものなのに/それゆえにとても濃密な語りとなっており、読むにつれてじっくりと作品世界に身を沈めていくような感覚があった。この調子でもっとずっと読んでいたかった。 語られない余白こそが雄弁であるかのようで、そこは詩のように思えた。詩的な小説というよりむしろ、これは詩そのものではないのかと何度も思ったのだった。 通常の文学作品を油彩に喩えるなら、本作は水墨画と言える。そもそも筆致(文体)どころか画材(言葉/言語観)が違うのではないか。それくらい類例のない簡素な書き方で、コロンブスの卵のようでいておいそれと模倣できるものではない、フォッセの生理においてかたちを得た文体/作品かと思う。 また一方で、描写が克明なので映像化しやすいだろうなとも思った。実写映画はもちろんのこと、アニメ化したら面白くなりそう。
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