
風邪ひき
@damdamdan
2026年1月31日
日の名残り
カズオ・イシグロ,
土屋政雄
読み終わった
主人公の老害ムーブに作者の狙いどおりイラッとしたり滑稽に思ったりしながら、やがて切ない気持ちになり、引き込まれて読み終えた。
人の気持ちよりも職務を優先し、それに疑問を持たずに生きるしかなかった男。例えば日本の江戸時代の武士だとそれは忠臣の美談とされただろうし、本作の戦前イギリスでは執事の品格として語られている。
でも例えば第二次世界大戦のドイツに住んでいたらユダヤ人虐殺に加担する真面目な役人となったかもしれない。
その残酷な歴史的可能性も匂わせながらも、ある年老いた純粋主義者の男の、戦後の穏やかな日常と回想を丁寧に描き、選択肢を間違えたのではと悔やむ姿と、それでもなお訂正は遅くないと気づく、切ないが爽やかな小説。
描き方を変えたらハンナ・アーレントの言う『悪の凡庸さ』にもなるだろうことを、
誰にでも起こり得る人生の些細な過ちについての上質な物語にしてる、さすがの名作でした。





