
ピエ
@pie_202
2026年2月1日
薔薇の名前[完全版] 下
ウンベルト・エーコ,
河島思朗,
河島英昭
読み終わった
読了。大変に面白かった!
巻末の(と言っても120ページある)覚書と解説で少しペースダウンしたが、本編の後半部分は特に夢中になって読んだ。
第四日で、ウィリアムが書物についてより深く語ってゆく場面が特に気に入った。「書物はしばしば別の書物のことを物語る」(p.53)という彼の言葉を受け、それでは文書館は、その内部で膨大な書物たちがひそかに囁き合っている一種の生き物ではないか…と考えるアドソと共に、私も畏怖のようなものを覚えた。
ウィリアムが故郷であるイギリスやアイルランドの書物について語る時に、懐かしさ愛おしさを込める様子も好きだった。中世においては辺境と見なされただろう故郷から、今の距離感とは比べ物にならないほど遠く隔たって生きる人にとって、かの地で生まれた書物は故郷との繋がりを感じさせる唯一に近いものだったのかもしれない。そう考えると、アドソには「変な言葉」としか思えない崩れたラテン語を、懐かしそうに見つめるウィリアムに何だか共感してしまった。
上下巻を一か月ほどかけてゆっくり読んだため、私もまたこの僧院で過ごしてきたような気持ちになっており、物語が終わって自分の中からこの場所が失われることが少し苦しい。きっとまたこの山上の僧院に、写字室と文書館に戻りたくなり、何度でも読み返すであろう物語だった。

