いるかれもん "月まで三キロ(新潮文庫)" 2026年2月2日

月まで三キロ(新潮文庫)
前回読んだ『八月の銀の雪』に引き続き相変わらずジオジオしくて(?)爽やかな短編集。地球科学系出身の私はウキウキしながら気持ちよく読み切ることができた。短編集読んでいると途中で飽きてしまうことも多いのだけれど、伊与原作品はそんなことが全くなくて、本当に読んでいて「楽しい」「面白い」と思う作品がとても多い。「天王寺ハイエイタス」とか、私がもろに専門にしていた古気候学がテーマになっていて胸が熱くなった。地球科学をはじめとした科学の魅力が物語を展開する鍵となっていて、読んでいて「そう!そうなんだよ!そこがいいんだよぉ!」みたいな気持ちになる。  その中でも印象的な言葉もあった。特に「アンモナイトの探し方」で出てきた、「わかるための鍵は常に、わからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず、何がわからないかを知らなければならない。つまり、わかるとわからないを、きちんとわけるんだ。」という言葉は、大学院時代に指導教員からよく同じようなことを言われていた。当時は研究を進める中で言われた言葉だけれど、仕事をする中でも、同じことは言えて今でも大切にしている考えである。  最後の「山を刻む」の主人公の決断は、展開としては突飛な気もしたけど、それ以上に鬱屈とした気持ちが吹っ切れた爽やかさを感じた。  小難しいこと考えずに爽やかで面白く、気軽に読める短編をお求めの方、是非是非。
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