
No.310
@__310__
2026年2月3日
怠惰の美徳
梅崎春生,
荻原魚雷
読み終わった
怠惰とは基本的に第三者からの評価によってなるものだと思っていたが、梅崎春生は誰に指摘されるでもなく好き好んで怠惰をやっている感じがあって面白かった。一本筋の通った怠惰。
『寝ぐせ』が笑えて好きだった。
布団から出たくないよぅ、とつらつら書いていたかと思えば、押し売りが来たと見るやいそいそと出て行って口喧嘩。なんなんだ。
敵意を持って合うことが許される相手というのもそういないから、そんな状況が楽しいのも分からないでもない。
生命保険の営業に唯我論じみたクレイジーさをぶつけて困惑されるくだりが特にいい。
初対面の人を相手に発露していい狂気のわりとギリギリのラインだろ、と思うと同時に知的な爽快感がある。
そんな愉快な筆致とは打って変わる『防波堤』の鋭くも壊れそうな感情の描写もとてもよかった。
優しく繊細であるがゆえに、世界との摩擦に尖った態度を取らざるを得なかったのかもしれないな、と思う。
途中まで「あるある」「わかる」と笑っていたのに、全て読み終えた後は戦後派の痛みの一端に触れたかのような気持ちになった。



