
もつ
@motu
2026年2月4日
YABUNONAKA-ヤブノナカー
金原ひとみ
読み終わった
話題作ということで読んだが、とにかく長い。ゆっくり読んでいるうちに合間合間で感じていた感想も抜け落ち、つまりはどういう事なのか自分の中でも上手く考えが纏まらず、読み終わった直後なのに既に再読すべきか悩んでいる。マルチビュー形式で書いてて、それぞれの人物の偏った思考と人格の書き分けがものすごくて、金原ひとみさんという作家さん自体も長岡友梨奈のような人格の乖離のある作家さんなのではないかと恐れ慄いた。
十数年前の婚姻関係にあった間柄でなされていた事を性的搾取だったと叫びながらも自分は若い彼氏と同居している立場にある長岡友梨奈のヒステリックでエキセントリックな面にはとにかく同調の出来なさがあり、でも個人レベルの思索の話になると一理あるのが何とも複雑なキャラクターで、奇妙な愛着を持って眺めていた登場人物なだけに、展開としてのショックは強かった。
また、木戸悠介視点の救われなさ。人は歳を取るごとに価値観の変革を成すのが難儀になり、なかなか自分をアップデートしたり、若い人の価値観を自分の価値観と擦り合わせて上手く立ち回るのが難しくなっていく生き物だとは私自身20代後半にして悩んでおり、誰かに自分の生きた時代とそこで形成されてきた自分という物を肯定して欲しいとどこかで悲しさや虚しさに立ち行かなくなる日が来るのだろうかとやや絶望に近いものを覚えた。色んな思い出を実は美化したり自己正当化してるだけなんじゃないの?っと猜疑心を感じる語り手ではあるものの、時代やそれを取り巻く空気感の被害者とも言えるし、要はどれだけ自分の美意識を持ち、『なにか無いのか?』という自問自答にたくさんの答えを持ち合わせていくかの問題なのだろうとも思う。その時その時を一所懸命に生きていても虚しくなる日が来て、だからこそ最後のリコ視点の「誰かのための無敵感」という若さの持つ煌めきに圧倒的に心が救われる思いがする。
この潔癖症な人間が増加している社会において、誰からも好かれるなんて不可能で、視野狭窄と言われようと大切な誰かの為に自分の正しさを持つ勇気が欲しい。


