
読書猫
@bookcat
2026年2月5日
パンチラインの言語学
川添愛
読み終わった
(本文抜粋)
(『タッチ』について)」
「めざせカッちゃん甲子園」の語順の良さ
(『パルプ・フィクション』について)
ギャングに追われる立場になったボクサーのブッチ(ブルース・ウィリス)が、逃亡のために利用したタクシーの運転手エスメラルダ(アンジェラ・ジョーンズ)に口止めをしようとして、「もし誰かが君に今晩誰を乗せたか聞いてきたら、何と答える?」と尋ねる場面がある。普通だったら、「あなたのことは言わないから安心して」とか言いそうなところだが、エスメラルダは「本当のことを言うわ。身なりのいい、ほろ酔い加減のメキシコ人を三人乗せた、って」と答える。エスメラルダがブッチの意図を汲み取っているだけではなく、すでにウソの返答を用意しているところ、またそれを「本当のこと」と言っているところに「只者ではない感じ」がにじみ出ている。
(『ドラえもん』について)
今読み返して気づくのは、セリフの表記の面白さだ。藤子・F・不二雄先生の他の漫画にも通じる特徴だが、日本語の長母音(長く伸ばす音)を表記する際に長音符「ー」ではなく、「あ」行を使うことが多い。たとえば「だれかあ! たすけてえ‼︎」のように、「か」を伸ばした音を「かあ」、「て」を伸ばした音を「てえ」と表記する。「だれかー! たすけてー‼︎」ではないのである。個人的な感覚だが、「ー」だとそのまま伸ばす感じになるが、「あ」行だと独自のピッチアクセント(音の高低差)が生まれて、独特のおかしみが出るように思う。