ヨル "寝相" 2026年2月6日

ヨル
ヨル
@yoru_no_hon
2026年2月6日
寝相
寝相
滝口悠生
表題作『寝相』を読み終わる。 滝口さんの文体がぶあ〜〜〜と細胞の中まで入りこんで来る感覚。入れ代わり立ち代わり語られるその人の言葉。思い出と今と現実と、そして未来の話しが、複雑に絡み合って、竹春となつめの間をいつまでも漂っているようだった。 最後の、登場人物が夢の中で一同に会する場面が特に印象的だった。もっと読んでいたいと思った。 窓から入る月の光に照らされた竹春の顔には、今夜から明日へ向から小さな時間だけがあった。これまでの人生も、これから先の生と死も、明日になったらまた悩み苦しむ疲れやすい体のことや弥生や原郎のこと、潔男や柿江のこと、イザベルやウグイスのこと、食欲や眠気のことなど何もなく、それらを体から逃がして、あるいは背中に敷いて、竹春は空っぽの頭と体で眠っているように見えた。眠りのさなかにそれらを忘れてしまうのは、竹春にとっては不本意なことかもしれなかった。けれどもそれは自由にならない。竹春が眠っている間、竹春の生きた時間を集めて一晩中過ごしていたいとなつめは思った。でも眠い。眠ったら自分もまた、自分のことや竹春のことを忘れて、自分の体ひとつだけ、ただそれだけになって、あとは朝まで誰もいなくなる。p.67より
寝相
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