mikiko1732
@mikiko1732
2026年2月6日
四維街一号に暮らす五人
三浦裕子,
楊双子
読み終わった
夜に読んではいけない物語だ。
前作(「台湾漫遊鉄道のふたり」)にもかなり食欲を刺激されたが、あれは主人公が食いしん坊という設定だからと思っていた。
違う。
これは著者が相当な食いしん坊なだけだ。
今作もシェアハウスに暮らす5人の女性の物語のはずなのに、次から次に出てくる魅力的な料理の数々。これは知っている。食べたことある。知らない。食べたことない。これは好きじゃないやつーーーー結果、おなかがすく。
いや、この本はそういう物語ではない。
日本統治時代に建てられた築100年近いシェアハウスで暮らす5人の女性の物語である。そう、ただの女性たちの日常の物語のはずだった。
最後の最後に凝縮した過去と現在が縄のように絡み合った物語が展開されるまでは。
それまではそんなことは微塵も感じさせずに、ぬるい流れるプールで流されるままに物語を楽しんでいれば良かった。しかし、突然それは幕を開ける。流れるプールは突然、洗濯機となり激しい渦のなかにわたしを飲み込んでいった。
本省人と外省人。
独立派と非独立派。
この2つの2項対立は台湾を理解するうえで欠かせない因子だと考えられてきた。
物語の中でも各登場人物はそれぞれ異なるエスニックグループの出身とされ、その違いが料理を通して語られる。しかし、そこには違いが明確なときもあれば、グラデーションのようなときもあることが語られる。
わたしは今までなぜ台湾国内に台湾の独立を支持しない人々がいるのかが理解できなかった。しかし、登場人物の一人、安修儀がある場面で言う。
「わたしは台湾人で中国人だよ」
そこまでに語られた彼女の祖父の生き様に、孫である彼女のこの言葉で、わたしはやっと初めてうっすらと、なぜ台湾人の中に台湾の独立を支持しない人々が存在するのか、それが理解できた気がした。
日本人のわたしが言うべきことではない気もするが、それは国民党の呪いのように思える。
外側から見ていると不可解なことが、内側では時にはグラデーションのような温度差を持って時には複雑に事象が絡み合っていることを本書は物語を通して鮮やかに描き出している。
硬くなく軽やかに台湾の過去と現在を語り、さりげなく台湾への理解を深めてくれる。とても、とても良書でした。
以下、備忘録として。
巻末の翻訳者あとがきによれば、著者の「開動了!老台中」(これは原著を見る限り、食べ歩きエッセイと推測される)も日本語版が準備中ということなので、楽しみに待ちたいと思います。

