"樽とタタン" 2026年2月6日

霧
@yoruto
2026年2月6日
樽とタタン
樽とタタン
中島京子
あらすじ 今から三十年以上前、小学校帰りに通った喫茶店。店の隅にはコーヒー豆の大樽があり、そこがわたしの特等席だった。常連客は、樽に座るわたしに「タタン」とあだ名を付けた老小説家、歌舞伎役者の卵、謎の生物学者に無口な学生とクセ者揃い。学校が苦手で友達もいなかった少女時代、大人に混ざって聞いた話には沢山の“本当” と“噓”があって……懐かしさと温かな驚きに包まれる喫茶店物語。 p145〜、抜粋。 「恋ほど孤独なものはない。恋ほど豊かな孤独はない。いつかおまえも恋をするだろう。そのとききっとおまえは気づくはずだ」  バヤイが孤独について話したのは、もしかしたら神主の涙を見た時ではなくてこのときだったのかもしれない。 「いまどきの若いものは、ひっついたり離れたり、ああいうのを恋だと思っているようだが、恋というのは人の一生において、そんなに何時も訪れるものではない。まったく訪れないことすらある。ほとんどの人間にはまったく訪れない。なんとなくそばにいた相手とくっつくのを恋だと思っているようなものに、真実など教えようもないが、あれはまったく、恋とは別の、生理現象の一形態である。おまえなどは幼くて、まだわからないかもしれない。しかし後学のために聞いておいたらいい。恋だけが、人から境界を奪う。恋だけが、階級も国籍も年齢も性別の壁も超える」
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