K野 "南洋標本館" 2026年2月10日

K野
K野
@knocano
2026年2月10日
南洋標本館
南洋標本館
葉山博子
大正11年。台湾生まれの日本人(内地人)の琴治と端正な日本語を話す台湾人(本島人)の陳は総督府高等学校で出会った。 生まれ育ちの境遇の違う二人は植物学への情熱で縁が続き、互いに研究を続けていつか琴治が内南洋、陳が外南洋の植物を集めて南洋標本館を作ろうという夢を語り合った。 だが時代はやがて長い戦争へと向かっていき… 序章の時点で打ちのめされて、自分の歴史の知識の無さを深く恥じた。でも正直を言えば高校まで日本史を詳しく学んでセンター試験も日本史で受けたのにこの事実をろくに知らないまま来られたのが日本の歴史教育だという事実がある。 本来ならこの本で描かれるようなことを中高辺りでしっかりと学ぶべきだしそうすれば間違っても今の世に戦争が起きていいなんて言い出す人はいないはずなのに。 この本から感じるのは戦争の恐ろしさではなく愚かさと虚しさだった。どんな大切なものも簡単に失われる。財産も、研究成果も、善性も尊厳も。 巨きなうねりに翻弄されながら植物学への情熱だけは終生失わずにいた二人の姿を描いた表紙を読み終えてから見るとたまらなく切なくなる。 本当に重く辛い話だけれど、不思議なほどとっつきやすくスルスルと読み進む文章なので止まらず読み続けてしまった。 今この本を読めて良かったと思う。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved