のーとみ
@notomi
2025年3月12日

貴女。
木爾チレン,
織守きょうや,
青崎有吾
かつて読んだ
このアンソロジー収録の斜線堂有紀「最高まで行く」が、日本推理小説協会賞にノミネートされたそうなので、それを金利して、前に書いた感想を載せときます。これも、 一つ前の「彼女。」も素晴らしいので、是非。
全編書き下ろし、全編ジャンル作家による百合小説アンソロジー第二弾、実業之日本社編「貴女。 百合小説アンソロジー」読んだ。というかオーディブルで聴いた。前作「彼女。」もそうだったけど、このシリーズ、人選がほんと素晴らしい。百合小説をミステリや犯罪小説の作家に書かせることで、百合というジャンルの特殊性を減らして、小説としての特殊性に目を向けさせることができる。その上でなら、女性同士の愛や恋が社会と対峙した時に起こる様々な壁が、そういうことを考えていなかった人にもリアルな問題として伝わる。しかも、作家によって、その問題はそれぞれで、その差異がまた面白いし、何よりエンターテインメントの作家たちだから、小説としてよくできてるのだった。今回もハズレ無しの全六編。
いきなり武田綾乃「恋をした私は」の静かな愛情と静かな狂気が当たり前に同時進行する様子を、驚くほど自然に描いて、このアンソロジーがどういうものかを見せつける。続いて円居挽「雪の花」は、日常の謎の裏を百合でやるという、ものすごく円居挽らしい捻ったミステリで好き。
織守きょうや「いいよ。」は真正面からの百合小説でビックリ。でもこういうのが真ん中に入ってるのいいな。頭も良くて美人で性格もいい女性同士の恋愛というのが、とっても今っぽい。女性同士の友情と恋愛をt平行して描くのが素晴らしいアイディア。木爾チレン「最前」は、アイドルが推しを救い、推しがアイドルを救って、世界に立ち向かう、最高のアイドル小説。ファンタジーだけど極めてリアルというのが自然に出来るのが百合小説というジャンルの面白さだなあ。
青崎有吾「首師」は、前回の「恋澤姉妹」とは全然違う方向だけど、前作に比肩する大傑作。これと、最後の斜線堂有紀「最高まで行く」は、本気で泣きそうになるからオーディブルで聴く場合は注意。電車の中じゃなくて良かったーと本気で思った。「首師」は、死体の偽首を作る職人と、難攻不落の城を指揮していたが捕まってしまった姫との間の、恋と矜持と芸術と仕事についての物語。姫の名探偵ばりの洞察力以外にも、きちんとミステリ的な仕掛けが施されてるのが流石の青崎有吾。ルッキズムと美人画論についてのひとつの解答でもあったりするから、美術関係者も読んでみるといいよ。泣くから。
斜線堂有紀「最高まで行く」は、もう百合小説のひとつの到達点じゃない?というくらいの大傑作。女性同士の恋愛が孕む問題点を、私的なものも公的なものも社会的なものも全部ひっくるめて、物語にした上で、全部を焼き払って解決する力技を、とにかく心理を丁寧に描いて実現させる。ものすごく美しいラスト1行の衝撃。記憶喪失をめぐるミステリであり、嘘についての考察であり、合理が真理に敗北する物語だったり。捻れてるのにストレート。こういうの斜線堂有紀の独擅場だわ。
ということで今回もまた、現代エンターテインメントに於ける恋愛小説の最前線があるから、前作と併せてみんな読むといいよ。書籍版は扉絵が、それぞれの作品に合わせた絵描きによって描かれてるから、そっちも必見。




碧の書架
@Vimy
斜線堂さん、推理作家協会賞ノミネート!大好きな作家さんが大好きな賞に選出されたなんて、嬉しいしめでたいです✨
斜線堂さんの作品は凄まじいので、選出されるのは当然だと思いつつ、世の中に見つけられてしまうのか…そっと宝物のように愛でたかった…みたいな気持ちもあったりw
毎回驚きや感動をくれる素敵な作家さんですよね😊