綾鷹 "強運の持ち主" 2026年2月11日

綾鷹
@ayataka
2026年2月11日
強運の持ち主
強運の持ち主
瀬尾まいこ
ショッピングセンターの片隅で占い師を始めたルイーズ吉田は、元OL。かつて営業職で鍛えた話術と、もちまえの直感で、悩む人たちの背中を押してあげるのが身上だが、手に負えないお客も千客万来。「お父さんとお母さん、どっちにすればいいと思う?」という小学生。何度占いがはずれてもやって来る女子高生。「俺さ、物事のおしまいが見えるんよ」という大学生まであらわれて、ルイーズはついに自分の運勢が気になりだす…。 短編4つともとても心が温かくなった。 瀬尾まいこさんの小説はからっとした明るさと人と関わる温かさに溢れてるなぁ。 どの小説も、大変なことがあってもなんとかなるさと楽観的な気持ちになれるし、自分の周りにも人の温かさは沢山あると信じたい気持ちになる。 特に好きだったのは、再婚に最適な時期が占いで出てるのに、竹子さんが子供を理由に時期をずらすと伝えるシーン。 正論やデータよりも、自分の直感や感情が自分の大切にしたいものを表しているのだと思う。 ルイーズが帰宅すると、いつも通彦が変わったご飯を作って待っているところもほっこり。 相手への愛情って日常のそういうところに感じられるよなぁ。 人との関わりに疲れたら、また読みたい小説だった。 ・その晩はそのまま二人でリビングで朝まで過ごした。二人とも翌日仕事があるのに、うとうとしては目を覚まして、しゃべったり、愛し合ったりして過ごした。 通彦の身体の柔らかさも温かさも、どれもずっとなじんできたもので、終わりのにおいはどこにもない。通彦にくっつきながら、私の中の不安はおもしろいくらい簡単にするすると消えていった。結局、どんな才能のある人の言葉でも、予言や占いは当てにならない。自分で確かめてこそ、納得ができるのだ。 とりあえず、私と通彦の終わりはまだまだ訪れそうもない。通彦と抱き合っていると、そう確 僧できた。そして、それと同時に、私は自分のおしまいが何なのかがわかった。私の元に訪れるおしまいは、もっと他のことだったのだ。 ・うん。いくら正しいことでも、先のことを教えられるのは幸せじゃないよ。占いにしたって、事実を伝えるのがすべてじゃない。その人がさ、よりよくなれるように、踏みとどまってる足を進められるように、ちょっと背中を押すだけ。占いの役割って、そういうことなんだね。武田君におしまいを宣告されて、身をもってそれがわかった気がする ・「忙しかったけど、楽しかったな」と、大きな伸びをした。 「たくさんの人を見ると、その分やっぱり面白いよね」 「ええ。見ず知らずのいろんな人の話を聞くだけでも面白いのに、その上、その人の身の上のこととか、将来のこととか一緒に考えられるんだもん。お得な商売です」 「いかにも竹子さんらしい発想だね」 と、私は笑った。でも、案外当たっているかもしれない。それが占いの醍闘味なのかもしれな い。 ・「でも、早くしないと彼の運気はどんどん下がるよ。五月までに結婚しておかないとうまくいくかどうか・・・・・・」 「そうでしたね」 「そうでしたねって、せっかく今がチャンスなのに」「いいんです。私の人生は、健太郎しだいだから」「健太郎しだい?」 「ええ。いくら相性がよくても、健太郎がいやなものはだめだし、いくら時期がよくても、健太郎が認めてくれないと動けないから」 占いにまじめな竹子さんが、さらりと言ってのけた。 「そうなんだ」 「そうなんです。子どもがいると、大変ですよ。占いにも従えないんだもん」竹子さんはちっとも大変そうではなく、楽しそうに顔をしかめて見せた。 竹子さんの明日を決めるのは、占いでも自分自身でもない。竹子さんの明日は子どもによって、動いていく。私の運勢を動かすのは、今はまだ自分自身だ。だけど、ほんの少し、私のこれからを決めるのに、通彦が入り込んでる。通彦も同じ。私が入り込んでるはずだ。
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