
くらぱ
@reads_MS
2026年2月11日

チョコレートコスモス
恩田陸
読み終わった
舞台のお話が読みたくて。
「少女歌劇☆レヴュースタァライト」を補強する物語を探す試みだったが、大当たりだった。
恩田陸さんの小説読みたかったから、こんなに良い作品に出会えて幸せ。
舞台に立つ真の悦びを知ってしまったら、それを知らなかったときの自分には戻れないこと。
そして、その悦びに手を伸ばす不安や恐怖が、無垢であまりに自意識のない飛鳥に足りないものであり、何者かになる前から役者であることを運命づけられた響子が苦しめられているものなのかなと。
響子と飛鳥、まったく違う境遇でありながら、互いに足りないものを補完し合っている構造が美しい。
響子が初めて舞台の快楽を知った『ハムレット』
それと同時にその快楽に傾倒する自分をどこかで制御している。
飛鳥が初めて舞台の先にある何かを感じた『ハムレット』
しかしその何かのために、貪欲になることを知らない。
飛鳥の壁は自己主張の少ないキャラクターだからやや複雑だけど、『自分』がないことだと語られている。
そしてそれは兄や龍子、芹澤によって補完されている。
空手が怖くならないと、つまり、自分の強さの物語が通用しない世界があることを知らないと、もうそれ以上強くはなれない。
客観的なのに客観視できない。分析するけど見てはいない。つまり、理屈で考えられるコントローラブルな論理で固めて、心から恥や恐怖を感じるような状況から目を逸らしている。
飛鳥が「きちっと計画を立ててコツコツ積み上げる」
ことが好きで、「秩序のないイレギュラーな日常は性に合わない」「自分の知らないところでどんどん話が進んでいっちゃうのが嫌」と言っていることからわかるように、本当の恐怖と対峙することを本能的に避けているんだろうな。
ハイデガーでいうところの、実存的不安に対する無意識の防衛だと思った。
神谷や他の凡人舞台好きキャラたちは若干薄かったけど、彼らもまた批評家になってしまう自分と、心から作品を創りたいと願う貪欲さとの間で揺れているのだな。(むしろそのバランス感覚こそが彼らを“平凡”たらしめていて、飛鳥が“天才”である所以だと思ったけどな)
「女二人の舞台」←あまりにもスタァライトすぎて、こんなにもドンピシャな作品そうないかもしれない
あの頃には戻れない
何も知らなかった日々
胸を刺す衝撃を
浴びてしまったから


くらぱ
@reads_MS
恩田さん、続編を想定していたようだけど、飛鳥がいつか壁にぶち当たるところまで書く予定だったんじゃないかな
飛鳥は子供が噴水と戯れているシーンで、
自分がまだ「理由を問われていない段階」にいることを直感的に掴みかけている。
そしていずれ、その無垢は終わると予感している。
飛鳥には“本来性”がない。
楽しさが消えて、評価されなくても、舞台に立ち続けることの理由を見つけられるのか。
それを問われる日が来ることを、芹澤は知っているんだろうなぁ。
実存主義的すぎるかな。