
読書猫
@bookcat
2026年2月10日
レトリック感覚
佐藤信夫
読み終わった
(本文抜粋)
“ふだん文章に接するとき、人は決して言葉の模様を《観察する》のではなく、たいていは無心に《読む》。けれども、知らず識らず、私たちはそのことばづかいによって、快感をおぼえたり、退屈したり、ときには反感をいだいたりする。そこにレトリックがある。”
“ゆうべ、あなたひとり《だけ》が、たった一回《しか》体験しなかったことがらには、名まえがついていない。”
“ことばは思考の衣装ではなく思考の肉体そのものである、と言う中村雄二郎は、哲学の知に新しい活力を与えよみがえらせるためには、ことばにイメージをとりもどすことが必要だと主張する。”
“あっさり「雪」と言ってもよさそうなところを、わざわざ「白いもの」と言う。筆者はちょっと気取ってみたかったのか。いくぶんかは、そうだろう。
しかし、この文のなかでは「雪」より「白いもの」のほうがいっそう正確だったのだ。”
“数にかぎりのあることばをたよりにしてかぎりない事象に対処しなければならない、言語の宿命が比喩を必要とする……とは、これまでもくどいほど強調してきた事実だが、そのための人々のさまざまの工夫がつもりつもって、辞書のなかの単語たちは、すこぶる弾力的な意味のひろがりをもっている。”
“「うれしい」と言うとき、人はたんにうれしいのであろう。それに対して、
「かなしくはない」と言う表現は、うれしさのかたわらに、存在しないかなしみの映像を成立させる。”