
にょろぞう
@3mmer_4L356
2026年2月12日

羆嵐(新潮文庫)
吉村昭
読み終わった
借りてきた
学びと面白いが同時に襲いかかってくる作品だった。
元々、この事件はTwitterの百年前新聞に端を発してあらましを知っていたのだが、物語として事実に肉がつくことによって、壁一枚隔てた異常の視認性の悪さ、家々の遠さ、夜の寒さなど見えてなかった部分が見えてきて一層恐ろしかった。
今でこそ屋内から外への発信手段があるものの、それがない時代、いつ現れるともわからない熊に怯えながら家々へ事件を伝え回った人たちの恐怖はどれほどのものだったのだろう。
彼らの内面に必要以上に触れることもなく淡々と告げられていく事実たちは、味気ないのではなく自然という大いなるものの前に人間の機微など些事であると突きつけられたような思いになった。
今まで小説=主人公や登場人物の心の機微に触れてなんぼなのだと思っていたけれど、そんな偏った価値観は熊の前では風の前の塵に同じだった。
