
阿久津隆
@akttkc
2026年2月5日
サンクチュアリ
フォークナー
読み終わった
「あたし、『神様』のことはいつも男としてしか考えなかったわ」とルービーが話し、ホレスは法廷へと続く広場を横切っていった。法廷の中にはたくさんの人。
p.370
その空気には煙草や酸い汗や大地のにおいとともに、まさしく法廷そのもののにおいも混ざっていた―あの黴くさいにおいだ。ここで消耗された欲望や貪欲さ、敵意や口惜しさなどの混合したものでありながら、それ以上ましなものがないために、一種の頑とした安定感も含んでいるにおいだ。
それ以上ましなものがないために、一種の頑とした安定感も含んでいるにおい。フォークナーは凄い。そして、そうか、というふうに小説が終わって、解説を読むと、あ、そういうことが起こっていたんだ、と知る感じがあった。フォークナーは「自分が想像しうる限りの最も恐ろしい物語」と語ったそうだ、当初は「私としてはこれは安っぽい思いつきの本だ」とも言った、しかし改稿をして恥ずかしくないものに仕立てたそうだ。この手つきはそれにしてもどういうことだったんだろうというか、どうしてここまで内面に踏み込まない語り方を選んだのだろう、テンプルだけではなく、動く人形を描くみたいな描き方で、凄惨な出来事を描く描き方として、これが適切な距離の取り方という判断だったのだろうか。この手つきこそがもっとも恐ろしいもののように思った。
改めて背表紙のあらすじを、今度は安心した状態で見ると、そこには「女子大学生殺人事件」なんていう言葉はなかった、代わりに「女子大生」という言葉と、「殺人事件」という言葉がちょうどぴったり上下に並んでいて、それでまとめて女子大生殺人事件には見える、というものだった。