
しゅしゅ
@hon_46
2026年2月23日
流浪の月
凪良ゆう
読み始めた
借りてきた
重いことはそれだけで有罪だわね。
だって手をぶらぶらできないじゃない。
お母さんは我慢をしない。
湊くんはえらい、すごい、大好き、とお母さんはいつも言う。
忘れられなくて悲しいから、甘いお菓子が必要なの。
お父さんもお菓子だったのかと問うと、湊くんはご飯よとお母さんはまた泣いた。なくちゃ生きられないと。
わたしはお母さんにとって、生きていくために必要なご飯にも、悲しみが紛れるお菓子にもなれなかった。
それどころか、お母さんの大嫌いな『重いもの』になった。お母さんは重いものは持たなかった。お母さんは我慢をしない人だった。
他人を痛めつけるくせに、自分の痛みにはてんで弱い。
誰かに心を奪われるという意味なら、ずっと文のことばかりを考えている。なんの意味もないのに。
なのに今のわたしを生かしているのは、まさしくその意味のないことだ。
「わたしは、昔、どんな子だった?」
「ぐうたらで、少し馬鹿な感じ」
わたしは、それが、嫌いなの
「そういう自分を欠陥品だと思ってるの」
私の中には冷たく固まった部分があって、本当の意味では誰ともつながれない人間なんじゃないかと思っている。努力してもなんともならない部分が壊れているのだと。それはもうどうしようもないと受け止める一方で、人の営みからはじき出されてる、という悲しみも抜けきらない。矛盾と孤独感。わたしは初めて誰かにこのことを打ち明けた。
どんな痛みもいつか誰かと分けあえるなんて嘘だと思う。わたしの手にも、みんなの手にも、ひとつのバッグがある。それは誰にも代わりに持ってもらえない。一生自分が抱えて歩くバッグの中に、文のそれは入っている。わたしのバッグにも入っている。中身はそれぞれ違うけど、けっして捨てられないのだ。
「いつまでたっても、俺だけ、大人になれない」
なにも生み出さず、ひとり朽ちていく。
誰ともつながれす、血を残すこともない。
ぬるい涙があとから湧いて、文と初めて言葉を交わしたときに降っていた雨のように、わたしのすべてを濡らしてほぐしていった。
わたしと文の関係を表す適切な、世間が納得する名前はなにもない。