
編集Lily
@edition_lily
2026年2月15日
本を読めなくなった人たち
稲田豊史
読み終わった
出版業界の人間にとっては辛いことしか書いてないのだけれど、苦しくても現実逃避せずに読んだほうがいい。
私はよく、
「書籍がマスだった時代のほうが異常。出版市場は明治くらいの規模感が適正だと思う」
「10万字以上もある個人が書いた文章を100万人もの人が、何時間もかけて読む。なんてほうが冷静に考えてどうかしていた」
「いま調子のいい、それなりの社員数を抱えるビジネス書や実用書の版元が今後10年内にいちばんきつくなる。人口も減ってるうえに情報は本以外ですでによくなっているから、社員を支えられなくなる」
と言ってきた。
本書の末において著者はまったく同じことを書いていて、しかもこの結論がいろんなデータや取材に裏打ちされているという意味で、傷が抉れた。
〈今後、文字以外のメディアに流れつつある「消費者」向けの本が刊行される理由は希薄化し、活字の本は「読者」向けにウエイトが置かれることになる〉
〈令和の今、「長文を読める人が減っている」「本は贅沢品になった」といった書物を取り巻く状況を前にすると、まったく異なる外的要因がもたらしたものながら、読書という行為の立ち位置が過去に回帰しているようにも見える〉
著者は出版で仕事しているので、この本のために取材し、調べ、そのファクトを検討して書いていくことが「とにかく苦しかった」と書いている。
出版にいる私も、著者の気持ちがよくわかるし苦しかった。いまはまだ有象無象が入り乱れる出版市場だけれど、そのうちそんな入り乱れはなくなり、焼け野原みたいになっていくだろう。そのときに残る本とはなんなのか? そのことを考えながら本をつくらないとならない。

