みっつー "裸足で逃げる" 2026年2月15日

みっつー
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@32CH_books
2026年2月15日
裸足で逃げる
裸足で逃げる
上間陽子
今、僕の頭の中で、見たことも、会ったことも、顔も知らない人たちの記憶と記録が、焼きついて離れない。 沖縄のキャバクラで働く女性を対象に行われた調査が書かれたこの本は、感情のおきどころを探すのが難しい。 歳若くしての出産、家族や旦那からのDV、レイプ、援助交際、自分の脳の中にある現実を受け入れるための扉がまだ開かれることなく、僕はその扉の内側で浅い呼吸を素早く繰り返している。 そう、僕が、僕自身が内側にいる。 内側にいれば、あらゆることがらから、目を逸らしていいと、この期に及んで、まだそう思っているということに、嫌悪感を抱く。 先日『半うつ(著・平光源、SUNMARK)』という本を本をテーブルに置いておいたら、母親に心配された。 そして「あんた大丈夫?」と声をかけてくれた。 確かにここ最近、シフトに入っていないときは、ずっとゲーム実況を撮るか、本を読むか、もしくは文章を書いているか、という生活をしていたので、「こいつ、何かを抱えているのでは…」と思われてもおかしくない状況ではあった。 しかし、当の本人は現状、鬱のような症状は実感しておらず、ゲーム実況も、本を読むことも、文章を書くことも、ある意味でのストレス発散になっているので、脳はむしろイキイキとしているように思う。 けれど、心配させてしまっている時点で自らが変な生活をしていることに自覚を持たなくてはいけないし、そもそも誰の目にもつくような場所にうつの本を置くべきではなかったのかもしれない。 けれど、こうも思う。 「うつの本を見て、怯えてしまうのはどうなのか」 何度も書くけれど、母が不安に思う気持ちも、もちろん分かる。 だけど、僕が本を買ったのは「うつ」について知りたいと思ったからだ。 僕はこの「怖いままにしておく」という思考こそが、とても怖いと感じている。 知ることで、見なくもいいものを見てしまうこともあるだろう。 知ることで、無視できなくなることも出てくるだろう。 考えが変わることで、昨日まで友達だった人と、気軽におしゃべりができなくなるかもしれないだろう。 でも、知らなくてはいけない。 読み終えたとき、その気持ちはより一層強くなる。 この本に出てくるような女性たちを救えるような立場に、今自分がいるとは到底思えない。未だに僕は内側で閉じこもっているだけなのだから、自分のことすらも、ままならないのだから。 だけど、少しずつ、知っていくことができるはずだ。 他人を、自分を、傷つけてしまうかもしれない機会を、一つ、減らせるかもしれないということだ。 誰かの傷を和らげたり、軽くしたい、なんて大それたことはまだ出来ない。 でも、一緒に笑ったり、泣いたり、喧嘩もするけど、仲直りしたり、そういうことはできるかもしれない。 他人を知るということは、自分知ることだと、改めて思う。 今日も、この世のどこかで、誰かが笑ったり、泣いたりしている。 それらはドラマじゃない、確かな現実だ。 その現実が存在していることを、胸の中で確かめながら、今日も、今日を生きている。
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