うえの "フィフティ・ピープル[新版]" 2026年2月17日

うえの
うえの
@uen0
2026年2月17日
フィフティ・ピープル[新版]
フィフティ・ピープル[新版]
チョン・セラン,
斎藤真理子
新版を改めて読んだ。 一生好き。 とても読みやすいんですが、その随所に現れる価値観や倫理観が私を救う。 ブックサンタでここ2年ほどこの本を選んでます。 #チョンセラン #フィフティピープル #韓国文学 ------好きなことば------ ねぇ、五十年後にはみんな死んでると思うより、三十年後ぐらい経ったらみんな孤児になってると思う方が怖くない? 家族ぐらい、一線を越えて自分の偏見を押し付けてくる人間たちもいない。 僕は、あなたみたいな歳のとり方はしないつもりです。それがいちばん恐ろしいです。 俺、脱退するアイドルの気持ち、わかるな。同じ会社に七年とか八年勤めて辞めるなんていくらでもあるのに、批判されるようなことじゃないと思うな。 自分のやりたいことが、今の社会では無用扱いされていると知ってはいるが、確固たる意志をもってこの専攻を選び、自分たちの後から来る人の選択の自由を保証するために、冷たい地面に座っている。 土台の大切さを気にもしない人たちが大学を統廃合している。 必要なんだよ。ああいう人たちが増えれば増えるほど、それとは違う人が必要になるんだよ。ラッパ手が必要なの。目をそらさない人が必要なの。目をそらさないこと。そのためにここを、選んだでしょ。 前に好きだった歌を大人になってからばかにする人って、何か、偉そう。いい歌だからずーっと歌われてるんじゃないの? 見渡す限りでたらめなのだから、子どもに別の方向を示してやることもできないのだ。 これが福祉なんだなあ。体験してみるまではわからなかった。 娘のことを考えなくてはならない。もしも将来、チャンボクや妻が認知症や他の病気にかかったら、この子一人で何ができるだろう。二人がいっぺんに病気になったら、耐えられるだろうか。そのときも国が助けてくれるだろうか。世の中はそういう方向に進んでいるだろうか。景気も悪いし、人口も減っていくのに、そんなことができるだろうか。 「九十五パーセントの女性が、公開してないってよ。何年か後に訊いてみたんだって。そしたら、自分の決定を後悔してる人は五パーセントしかいなかったって」 「どこで見たの?」 「インターネット」 「いい統計だね、それ」 「いい統計でしょ」 「けど、私がその五パーセントだったらどうしよう?」 「そうねえ」 「それ、どうやったらわかるのかなあ」 「わかるとしても、何年か経たないと」 「わかったら、おしえてあげるからね」 「うん」 たぶん、教えてくれないだろう。スギョンも忘れるだろうし、訊かないだろう。何年後か、お互いの目の中に、今夜のことを連想させるものを見つけたとしても、見えなかったふりをするだろう。何でもないことは何でもないことらしく、忘れなくては。 在所者の健康に国が責任を持つということ。極悪非道な殺人者であっても刑務所内で病んだり、死んだりするのを放っておかないということは、どこかドンヨルを安心させるものがあった。人目が届かないところでもシステムが機能しており、少なくともぎりぎりの線では人権が実態を持っているという点で。 世界を見る視点が似ていた。ハニョンはそんなところがあった。野蛮から文明へと脱出してきた人だけが持っている、基本的人権への強烈な指向性みたいなもの。青くさい表現かもしれないけど。 「何で地獄の穴(ヘル・ピット)なんですか?」 ずっと知りたかったが訊けなかったことを、イサクが訊いた。 「人生は地獄みたいで、楽しいのは少人数のよき友とうまいものを食べるときだけってことを、忘れないようにです」 耳に優しい話し方をなさるおじいさまだわ、とスンファは微笑んだ。古い古い傷を、その言葉は塗り薬のように覆ってくれた。それをスンファは一言も信じなかったし、同意もしなかったけれど、ありがたいと思った。 無意識に持って出てきたおそろいの指輪が、握りしめた手の中で踊った。 ある作品の創り手とその消費者は世界じゅうに散らばっているが、それは特別に結ばれた関係で、肌合いの似通った人々である 「もともとそうだなんて、ありえます?死ぬのが当たり前の職業なんて、なくさなきゃ。造船所で働きたければ死ぬ覚悟をすべきだなんて。工場でも病院でも人を全とっかえしてるんですよ」 ヒョンジェはなぜか真顔で言った。 「最近の若い奴は弱っちいな…」 「ミキサーにかけられたくないからって、弱いわけじゃありませんよ」 「それより……いつも負けてばっかりいるみたいで、辛いんです」 すべてがなぜこんなにもでたらめなのか、めちゃくちゃだらけなのか。このぬかるみの中で変化を起こそうと試みても、何てしょっちゅう、挫折させられることだろう。努力はかなわず、限界にぶつかり、失望させられ、のろのろ、のろのろと改善がなされてはまた後退するのに耐えながら、どうやったらくたびれ果てずにいられるだろう。ヒョンジェは気持ちを吐露し、そして尋ねた。話をかいつまむことは難しかった。 「私にアドバイスを求めているんじゃないでしょう?」 望んではいけないのだろうか。ヒョンジェはかすかに笑った。 「若い人たちは勘違いをしているよ。老人は答えを持っていると思ってるんだね。そんなことはないんだよ。私はただの年寄りです」 「他の方たちはそうでも、先生は違うと思うんです」 「君はほめ上手だね。私はアドバイスが嫌いだけど、ソ先生が望んでいるようだから言いましょう。ほんとは、アドバイスがいちばん嫌なんだよ、そんな資格は私にはないし。ただね、…私たちの仕事は、石を遠くに投げることだと考えてみましょうよ。とにもかくも、力いっぱい遠くへ。みんな、錯覚しているんですよ。誰もが同じ位置から投げていて、人の能力は似たり寄ったりだから石が遠くに行かないって。でも実は、同じ位置から投げているんじゃないんです。時代というもの、世代というものがあるからですよ。ソ先生はスタートラインから投げているわけではないんだよ。私の世代や、そして私たちの中間の世代が投げた石が落ちた地点で、それを拾って投げているんです。わかりますか?」 「リレーみたいなものだということですね?」 「それですよ。今でもすばらしい学生だね、君は。もちろん、そのことはしばしば忘れられます。ときどき、ろくでもない連中が現れて、反対方向に石を投げることもありますよ。でも、ちょっとでも遠くへ投げて、ちょっとでも長いスパンで見ていく機会が運よくソ先生に与えられたら——例えば四十年ぐらい後、私ぐらいの年になって振り返ったら、石は遠くまで来ているでしょう。そして、その石が落ちたやぶを次の人たちが探して、また、それを投げるんです。ソ先生では届かなかった距離までね」
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