本のまどろみ "掬えば手には" 2026年2月17日

掬えば手には
掬えば手には
瀬尾まいこ
どんなふうに着地する物語なんだろう、と思いながら読み始めました。 読み進めて「秋音」が登場する頃、常磐さんの周囲の人間関係から物語の輪郭が少しずつ見え始めます。 そこからはページをめくる手が止まりませんでした。 感情や表情の機微に敏感な梨木くんの心情を追っていると、思わず少し自分を重ねてしまう場面もありました。 人のことばかり気にして、自分の話は案外していないこと。 それをそっと指摘してくれる友達の存在。 音楽もスポーツも抜きん出た才能があるわけではない。 それでも、勇気が出ず一歩踏み出せなかった自分の人生を変える“きっかけ”があったこと。 自分にとっての当たり前は、他人に言われたからといってすぐに受け入れられるものではないけれど、梨木くんはそれをひとつずつ丁寧に刻んでいく。本当に誠実な人だと思いました。 常磐さんが経験してきた出来事は、きっと長い間、自分を縛るものだったのだろうと思います。 「あんなことをした自分が人生を楽しんではいけない」「笑ってはいけない」――そんな思いを抱えていたのかもしれないと想像すると、胸が痛くなりました。 泣きながら食べたオムライス。 大竹店長の言葉も相まって、目頭がじんわりと熱くなります。 最初はどこか現実味をつかみきれないまま読み進めていましたが、梨木くんと常磐さん、それぞれの内側が少しずつ紐解かれていくにつれて、生まれてくる感情がたくさんありました。 切なさもある。 お別れだけれど、どこか清々しさもある。 読み終えたあと、静かに「読んで良かった」と思える物語でした。
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