
うさみ
@usami
2026年2月17日
読み終わった
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・「美味しい」と食事を喜ぶことが、誰かを追い詰めている可能性を初めて知った。
食事が嫌いなニタニ。彼のような人は実際に存在するのだろうか? するんだろうなあ、と思わされる、生々しい心情描写だった。たしかに、バレンタインとかみんなが既製品を持ち寄る中で、手作りお菓子を作ってくる人は持ち上げられるよなあ。手作りお菓子が苦手な人もいることを思うと、あの同調圧力はきついか。今までなんとなく通り過ぎてきたものを見事に言語化されて、ハッとする場面が多かった。
・ニタニの考え方は、初めて知るものばかりだったけれど、「疲れて帰った日、自炊をすることが自分を大切にすることとは思えない。食事を作って、洗い物して、そうやって過ごすと自分の時間が全く取れなくなる」という内容のセリフには共感してしまう説得力があった。
私は外食が好きだし、美味しいものを食べに行くため遠出するタイプの人間だ。ニタニが理解できないタイプの人種だけど、日々のタスクに消耗する気持ちはわかる。
・ニタニがアシカワを切らない理由がまったく理解できず共感できなかった。ずっとニタニ目線で、彼女に対して嫌悪感をいだく描写がある。その描写がうますぎるから、より一層、気味が悪かった。
途中でアシカワが「結婚したらお菓子作りばかりできない」と言うのに対し、「彼女の結婚相手も何か諦めなきゃなのか」とまるで他人事みたいに考えているのに、最後の最後でニタニの口から「結婚」のワードが出たのはなんなのか。諦観? 個人的な意見を言うなら、アシカワ、ニタニに捨てられてほしい。異動してすぐ音信不通になってくれ。
・こんな風に思うのは、私がめちゃくちゃアシカワを嫌いになっているからなんだろうな。
体調不良で早退したその翌日に手作りお菓子持ってくる無神経さ、そのくせ人数分持ないと平気で言ってしまう図太さ。
猫のエピソードで自分だけ傘をさしているところなんて、本当に最悪。オシオのこと舐めてるでしょ。
周りから配慮される人間の解像度が高く、支店長やフジ、ハラダあたりとまとめて苦手な人になった。
・アシカワを苦手になったからだろうか、登場人物の中で、一番オシオに共感した。やっていることはえげつないのかもしれないけど、読んでいてモヤモヤしていた気持ちを彼女が解消してくれた気になった。
ニタニとの最後の飲み会でのやりとりが好き。「他人をチアするより自分をチアする方が難しい」というセリフには共感した。また、「人々は昔持っていた助け合う能力をなくしている。その方が生きやすいから。力強く生きるのにみんなで食べるご飯を『美味しい』と感じることは必要ない」という言葉も、これまでのニタニの心情描写に対する答えのようで好き。
・こうして見ると、物語の主人公はニタニのようで、オシオなのかもしれない。彼女だけがこの会社での出来事を経て成長を掴み取った。自分の気持ちに無理やり整理をつけて、脱却した。ニタニが最後に「結婚」という言葉を使ったのは、燻り続ける彼がここからもオシオのようになることはできないという暗示なのかな。
・Audibleで聞いたけど活字で読み直したい、と思う話だった。かなり好き。





