管太 "東京奇譚集" 2026年2月18日

管太
@r_f_1
2026年2月18日
東京奇譚集
東京奇譚集
村上春樹
奇譚だった。五つの話全てが不思議な出来事。村上春樹の筆力でリアリティのある文章として楽しめた。 『偶然の旅人』  作者の語りというのは新鮮。だが村上春樹の知人の話がストーリーとして語られる。知人は音に対しての感度が高い。沈黙の種類を聞く、というのが独自の感覚。男が自分の道を選ぶことによって、本来の自分に戻ることができた。その本来の自分を選択し続けることによって、真実が掴めた。現実にも不思議なことってあるよね、と言った話。 『ハナレイ・ベイ』  「サチの息子は十九歳のときに、ハナレイ湾で大きな鮫に襲われて死んだ」という一文目のインパクト。話のリアリティ・ラインが非常に高い。息子の火葬の料金をアメリカン・エキスプレスで払っていることに対する非現実性も、たしかにと思った。愛情があったのかなかったのかわからないような親と息子。しかし、意識していなくても確実に深い愛情で繋がっている。そんなことを思った。 『どこであれそれが見つかりそうな場所で』  何度読んでもよく分からない作品かもしれない。資本主義や宗教から超越したものこそがヒントなのかもしれない。 『日々移動する腎臓のかたちをした石』  奇譚性は一番薄いのかもしれない。「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない」というのはどこか自分と照らし合わせて考えてしまった。秘密が多い女の魅力はすごい。その秘密を追いかけたくなってしまう。対して主人公は女に(小説の展望という)秘密を教える。そうすると、女はさらなる世の中の秘密を教える。その『秘密』が時間をかけて主人公を揺さぶる。最後に主人公は女の秘密を知り、女から解放される。このことは、主人公にとって「本当に意味を持つ」。主人公の成長譚としても読める。 『品川猿』  名前を盗む猿によって女性が成長する。品川猿はいい存在なのか、悪い存在なのか。それは、どちらでもある。名前を盗むのは当然悪いことである。しかし、それと付随して品川猿は主人公に真実をもたらした。ただ『品川猿の告白』を先に読んでいたので、個人的には猿はただただ利己的な動物に思えた。品川猿という厄災を経て成長できるかは、その人次第。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved