りら "熟柿" 2026年2月18日

りら
りら
@AnneLilas
2026年2月18日
熟柿
熟柿
佐藤正午
2026年本屋大賞ノミネート作。 寝床でオーディブル聴こうとすると秒で寝てしまうのに、7章からほぼノンストップで朝方まで聴き続けてしまった。 誰しもが陥るかもしれない、咄嗟の判断ミス、あるいは不運が重なった惨劇のその後を見届けるために。 そもそも、身重の妻に長時間運転させることになるとわかっていながら、酔っぱらって寝ている夫という存在がのっけからして受け入れがたかった。すごく不審に思える。主人公がその点について夫を責めないのも不可解だし、大伯母の葬儀に果たして本当に参列しなければならなかったのか(自分なら悪阻を言い訳にして見送る)という問いが頭の中でずっとぐるぐるしていた。全て結果論だけど。 主人公は慎重かつ神経質な性格のようなのに、軽率な行動にも駆られてしまう。克明に描写されるヒステリックな言動に時に苛々、時にハラハラもした。両隣ですやすや眠る子供たちにぎゅうぎゅう押されながら聴いている自分には、産まれたばかりの子供と離れ離れで過ごさなければならないという全く想像が及ばない流転の人生が提示されていくごとに終始慄いていた。 轢き殺すことと、轢き殺して逃げることとの間に(罪の重さとは別に)どうしても相手に言い出せない心理的な隔たりがあるのかどうかも、自分には想像がつかなかった。 大雨の中、柿を抱えた老婆の姿が、自分が見たわけでもないのに残像のように蘇ってきて怖い。 同室のサイトウさんのくだりを聴いた直後にファミレスのドリンクバーで思わずオレンジジュースを選んでしまった。朝飲みたかったのに飲めなかった無念は根に持って当然だ。 オーディブル2.0倍速で。 作中、土居さんが図書館で取り寄せてまで読んだのは、船山馨『お登勢』、スマホの辞書は大辞林第四版。
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