
Moonflower
@Moonflower0226
2026年2月18日
聖母の贈り物
ウィリアム・トレヴァ,
栩木伸明
読み終わった
かつて読んだ
「マティルダのイングランド 三、客間」
【感想】
三部作その三。マティルダは48歳になっている。
戦後、チャラコム屋敷はある富豪に買い取られ、マティルダは周囲の反対を押し切ってその一族に嫁ぐ。すべては屋敷と老嬢の思い出のためだった。
本書中でもっとも怖い作品かと思う。いわゆる「信用できない語り手」による語り/騙りであり、それゆえにニューロティックなホラー感が醸される。ただし、実際のところマティルダと夫の間に何があったか/なかったかは曖昧であり、その宙吊り具合が絶妙。
三部作を通じて、マティルダにとって屋敷/老嬢の「物語」がいかに大きかったか/致命的だったかが描かれている。ひとの「世界観」の深化を辿った連作とも言える。
【全体の感想】
12年ぶりくらいでの再読。あらためてトレヴァーのうまさに唸らされっぱなしだった。
どの短編も概ね「何かを失ったひと」(もしくは「失うとは何か」)を描いた作品と言える。ゆえに後味は苦く、ときに胸に痛みを覚えるほど。それだけ登場人物に血が通っている証左であり、「人間が描けている」(嫌な言い方だが)とはまさにこのことだろう。
