カミーノアン "世界99 下" 2026年2月18日

世界99 下
世界99 下
村田沙耶香
村田沙耶香のベストアルバムのような一冊だと感じた。村田作品をすべて読んでいるわけではないが、本作の世界観の随所に既視感があり、それがむしろ読書の楽しみの一つになっている。 さらりとしたブラックユーモアと、コミュニケーションという営みに向けられた視線の冷たさは、やはり著者ならではの持ち味だ。 上巻のラストで、この物語を支えていたある共通認識が崩壊する。下巻では、その崩壊を受け入れた社会が、さらにクリーンに整えられていく。だれも犠牲にならず、だれも傷つかない理想の世界。その行き着く先を、主人公の視点で見つめ続ける。物語のリズムは終始一定で、感情を大きく煽ることはない。 印象的だったのは、被害と加害の立場が反転し、主人公の内面が揺らぐ場面だ。ピョコルンという存在を通して、エゴの向きが反転する。その転回は唐突ではなく、主人公が自らの変化に戸惑う描写には、これまでの村田作品にはなかった新鮮さがある。 本作は著者自身が「奇書」と位置づけている。そのざらりとした読後感は、その言葉が単なる誇張ではないことを裏づけている。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved