
nogi
@mitsu_read
2025年3月13日
みぎわに立って
田尻久子
かつて読んだ
大切な本
@ 紙片(しへん)
6年ほど前、この本に出会ったとき、前年の自然災害に関する仕事で精神的にかなり参っていて、静かな自分だけの、こころの居場所を求めて本を開いていた。当時、エッセイはあまり読んだことがなく、紙片の本棚を眺めて、本の佇まいの静けさに惹かれて手に取ったのを覚えている。言葉がひとつひとつていねいに胸のなかに、慈雨みたいに降ってきて、この本を開いているあいだだけは、穏やかになれた。
田尻さんの他の本も読みたくて、「ねこはしっぽで喋る」を探しに紙片に行き、在庫はないですかと聞いたら、入れますねと言ってくれた。しばらく経ってふらりと立ち寄ったら、顔を見て「あ、入りましたよ」と言ってもらい、特に予約したわけでもないし、名前も伝えていなかったけど、本は確かに並んでいて、あのとき初めて、個人のちいさな本屋さんで本を買う、ということに、楽しみを覚えた。それがあの時のわたしを救ってくれた。
そして、田尻さんのことが好きになった結果、その後、熊本の橙書店まで足を運んだ。本屋さんを目当てに旅することの楽しさもそうして知った。
だから、この本は、わたしのなかでいつまでも特別にきらきらしている。





