Moonflower "エビデンスを嫌う人たち" 2026年2月21日

エビデンスを嫌う人たち
エビデンスを嫌う人たち
リー・マッキンタイア,
西尾義人
第4章 気候変動を否定する人たち 〜 第8章 新型コロナウイルスと私たちのこれから 【感想】 科学哲学者による、科学否定論者との対話を理論と行動から綴った体験的ノンフィクションにして、他者との真摯な関係構築を提案する警世の書。 第2,3章が理論編で、残りが実践編と大まかに言える。後者はところにより語り口も軽妙で楽しく読めた。(ただし、科学哲学を知らないと読みにくく思えるであろう箇所はいくつもあるので、著者の旧著を読んでおくといいかもしれない) フラットアース(地球平面説)、気候変動否定、反GMO(遺伝子組換え作物)、反ワクチン、またそれらに共通する陰謀論といった科学否定論が語られるが、それらを珍奇なトンデモ言説として斥けるのではなく、なぜそのようなものを信じる(信じるに至った)のか、またどうしたらその考えを変えることができるのか、著者は対話を通じて真摯に探っていく。 執筆時期が第一期トランプ政権と重なっているため、アメリカが被った大きな転換期のドキュメントともなっている。 科学否定論者の五つの類型(①証拠のチェリーピッキング、②陰謀論への傾倒、③偽物の専門家への依存、④非論理的な推論、⑤科学への現実離れした期待)や、信念形成におけるアイデンティティの中心的役割、確信を変えるのは情報ではなく信頼であることなど、理論編から学ぶことは多々あった。 ただ、本書の素晴らしさは実践編にある。真摯な対話を重ね、様々な推測と思索を巡らせる著者の姿に感銘を受けた。 もっとも、著者が対峙したのは知的な人がほとんどで、言うなればもっと「考えが凝り固まった」人たちはほぼ(冒頭のフラットアーサー以外は)出てこない。なので、本書は哲学者による電波系陰謀論者ぶった斬り武勇伝みたいなものではない。むしろ、そうした信念を抱くに至った経緯に関心を示すことで、他者に心を開いてもらうことからすべては始まるのだと本書は語っている。 その実践は誰にとっても困難だろうが、それでも理論編で得た知識や実践編での悪戦苦闘ぶりは参考になるはず。SNS全盛/AI興隆の現代にあって、本書が愚直に示す「真摯さ」は眩しくも儚い(かもしれない)が、だからこそ重要なのだと思えてならない。
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