うしみつや "ピュウ" 2026年2月22日

ピュウ
ピュウ
キャサリン・レイシー,
井上里
良かった。すべて本の中に書かれているので何か言葉を付け加えるのは野暮だと思える。コミュニティに突如として入り込んだ、人種年齢性別すべて不明の「わたし」の視点で話が進むという点がまず新鮮だった。コミュニティ側の視点で「よそ者」を書きそうなところを、自らについて何も語らない語り手の「わたし」が視点で、そこが良かった。 コミュニティの人たちは一見するとやさしく、親しげで、親切だ。「わたし」に対して献身的に話しかけ、情報を得ようとするが、何も得ることはできない。差し伸べた手は当然感涙をもって受け取られるべきだという傲慢さは、彼らの異物に対する排他的な思考の表れでもある。「わたし」は何も語らない。一方的に与えられた善意を受け取らなくていい。語らなくていい。この、語らなくていいのだという作品の距離が、私にとっては救いに感じた。 本の装丁も良い。白い表紙を剥がすと、地の本は深く赤い臙脂色で、静かな質感がある。
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