
みっつー
@32CH_books
2026年2月24日
アリアドネの声
井上真偽
読み終わった
「諦めたらそこで試合終了ですよ」
このセリフはマンガ『SLAM DUNK』でバスケットボール部の監督をしている安西先生の言葉である。
このセリフは気を抜くとどこからともなくやってくる。
学校や会社、SNSやビジネス書、安西先生は色々な場面で「諦めたらそこで試合終了ですよ」と発言しているのだ。
講演だったら年間にどれくらい稼げるのだろうか。
コメンテーターとしてテレビに呼ばれるときには名前の上に「諦めたらそこで試合終了ですよ」が空前の大ヒット!とか書かれるのだろうか。
そんな「諦めたらそこで試合終了ですよ」教徒の方々にこの本を送ります。
井上真偽さんの『アリアドネの声』です。
この小説の中では「無理だと思ったら、そこが限界なんだ」というセリフが繰り返し使われる。
ある日、とある計画で作られた地下都市に巨大地震が襲う。
その地下には目が見えない、耳も聞こえない、話すこともできない、三つの障害を抱えた女性が遭難している。
その女性を主人公の会社で取り扱っているドローンでなんとか救出するというお話だ。
え〜!無理だよ〜!な展開が、鬼畜かというほどに続くこの小説のジャンルはミステリなのだ。
著者は「探偵が早すぎる」や「その可能性はすでに考えた」の井上真偽さんなのでミステリなことに違和感は感じないけれど、災害もの、女性を誘導して脱出させるといういわゆる脱出もの、などの特徴からはミステリなのか?という疑問を持ちつつ読み始めたけれど、読み終わる頃にはこういうミステリもアリなのか、と思った。
主人公は女性の救出を通して、自分の過去と重ね合わせて、とある答えを導き出す。
俺はやっぱり、人間に「限界」はないとおもうよ。
だって人間には、本当に何が「無理」かも、想像できないのだから。
井上真偽『アリアドネの声』p.297
見えなくても、聞こえなくても、話せなくても、希望を胸に、前に進み続ける姿は、今頑張っている誰かの背中を押してくれる。
とにかく自分ができることを、できる範囲でやるのだ。
「無理だと思ったら、そこが限界なんだ」
安西先生のセリフとも同じようで、また違う。
このセリフを読んだとき、あなたはどのように受け取っただろうか。
その答えは小説の中に、そして、あなたの頭と、心の中に。





