
和月
@wanotsuki
2026年2月24日
正欲
朝井リョウ
読み終わった
読んでいる途中、中断して日常生活を送っている間もずっとこの作品について考えていた。
感想の言語化がこんなに難しいと思うことは稀で、それと同じくらい、人間の細分化された相違と共通する欲求をここまで言語化できる本があるんだ、という驚きがあった。
人は常に独りになること、疎外されることへの不安を抱えている。一人一人が遺伝子による個体差を持つので、完全一致する存在で安心を得ることも出来ない。そこで安心するための材料になるのが他者からの受容と共感だ。多数派に属すると、第三者からの批判や評価の眼が分散されることも理由の一つかもしれない。
人という漢字は本来、1人の人間が地面にしっかり立っている姿を表している筈なのに、その実なんてあやふやで不安定な存在なんだろう。
そんなことを悶々と考えさせられる作品だった。
諸橋くんの一文が痛烈に刺さる。
「自分は偏った考え方の人とは違って色んな立場の人をバランスよく理解してますみたいな顔してるけど、お前はあくまで“色々理解してます”に偏ったたった一人の人間なんだよ。目に見えるゴミ捨てて綺麗な花飾ってわーい時代のアップデートだって喜んでる極端な一人なんだよ」
同じくらい、八重子のこの一文も胸を打つ。
「はじめから選択肢奪われる辛さも、選択肢はあるのに選べない辛さも、どっちも別々の辛さだよ」
「自分を削ってくるものだらけの世の中でなんとか前向きに生きていく方法を考えたいだけ。」
この2人の主張のぶつかり合いが、とても良い場面だと思った。
数秒後に誰かの言動に傷つく被害者になったとして、その1分後には自分の言葉が誰かの加害になり得ることを、私は私の為に理解しておきたい。
この作品を読んでいる途中に別のZINEでオススメ本として挙げられていた「聖なるズー(著:濱野ちひろ)」を、関連本として読みたいと思ったので忘れないようにここに記録しておく。


