
4分33秒
@433
2026年2月25日

読み終わった
落ち着きのない子どもだった私を、母は時折、近所の喫茶店へと連れ出した。
子どもの舌にはまだ苦いコーヒーの代わりに、白いクリームがたっぷりと乗ったココアを頼んでいたように思う。母のコーヒーと同じ、薄いふちのカップ。仄明るい蔵の中にいるような、ゆったりと静かな時間の流れをただ眺めていた。あのひとときが、私にとっての「喫茶店」の原風景となった。
今でも喫茶店のモーニングに足を運ぶ。
店の前の看板を眺め、数種類あるセットの中からひとつを選んで扉を開く。まだ客のまばらな店内に、常連の老人が入ってくると、注文せずとも新聞とお冷が運ばれる。奥からは食材を確認する店員のささやかな声が漏れ聞こえてる。トーストの焼ける香ばしい匂い。ブレンドコーヒーの心地よい苦み。
そういう気配を残す店たちがこの本には収められている。