
ミキ
@miki___63
2026年2月25日
「手に負えない」を編みなおす
友田とん
とても良かった。読んで元気になった。特に最後の章、そしてこの部分が好き。
[…]これほど膨大なものごとを憶えていて、ある程度自在に憶えたことを記憶から取り出せるようでいて、その実、記憶の全体を一望することは決して叶わない。思い出したものごとしか、意識の上に載せることはできない。
ところが、思い出したものには、常に思い出そうと意図したものとは違うものがわずかずつ混入しているのだ。その意味では、記憶もまた、手に負えないものであり、人が内に抱え維持している自然であり、またそれなしでは生きられない、暮らしを支えるインフラであると言える。
そこでは、言葉で言い表してみることが、重要な役割を果たしている。なぜなら、思い出したことやイメージを言葉で言い表わそうとするとき、即興的に用いられる言葉やフレーズもまた、その都度記憶から思い出された、つまりある時点で憶えた、もはやどこから来たのかわからない借り物であって、それを組み合わせて文章を綴るとき、すでにその時点で制しきれない記憶の編み物であることを避けられないからだ。(p.230)
[…]ここで見逃してはならないのは、書き進める過程で、借りてきた言葉で編まれたテクストが、本来言い表そうとしたイメージからはみ出す余剰を常に生じさせることであり、それによって書く者に、さらに書くべき次の何かを思い出させてくれることだ。それをくり返すうちに、気づいていなかった自分の考えに気づき、思い出すはずのなかったものまで思い出させてくれる。それこそが、人が記憶や言葉というインフラを駆使して語るということだ。(p.231)
読み終わった後、カバーのデザインを改めて眺めてみたら、細かなとこまでとても可愛かった。



