
nanari
@bluebook_mark
2026年2月26日
はくしむるち
豊永浩平
読み終わった
戦争や男性性といった圧倒的な暴力によって蹂躙されてきた/されている沖縄に堆積した声が語る少年少女たちの青春が痛みを伴って胸に重く響きました。と同時に、この物語は沖縄という限定的な土地だけで完結するものではなく、あらゆる場所に現在進行形で生きている未完と完成の狭間の子供たち=はくしむるち(白紙擬き)の傷と抵抗の物語でもあると私は思うのです。《対等じゃないのに、勝手に守るとか、守れないとかいって都合よく扱うのは、サギの言葉でしょ!?》。解放してくれた者が隠していた打算や傲慢さをあらわし新たな暴力として留まり支配しようとする苦しみの連鎖に、真のヒーローなどいないのだと絶望の中で絶望しながら、それでも待ち続ける、あるいは奮い立たせ自ら立ち上がるしかない瞬間の孤独と寂寥に対して、そこに存在するものが無いという安穏を享受しているから、ではなく、同じ地面の上で生きている人間だからという順接で以って人は連帯するべきなのだと思います。作中でも言及されている『帰ってきたウルトラマン』の第三十三話「怪獣使いと少年」にこんなシーンがあります(以下ピクシブ百科事典より引用)。
雨の降りしきる中、良は商店街にパンを買いにやってきたが、パン屋の店主の女性は「後でいろいろ言われるの嫌なんだよ。悪いけどよそへ行っておくれ」とパンを売らなかった。とぼとぼと帰る良。
「あの子宇宙人なんだって」
「やあね気味悪い」
「悪さしなきゃいいけど……」
するとパン屋の娘が後を追い、彼にパンを渡したのだった。
「同情なんかしてもらいたくないな」
「同情なんかじゃないわ。売ってあげるだけよ。だってうちパン屋だもん」
良は初めて笑顔を見せた。
現実世界で誰かに接する時、自分は常に彼女のようにいられるだろうか?そんなことを読み終えたいま、込上げるものを抑えながら考えている。

