みーる "プロジェクト・ヘイル・メアリ..." 2026年2月25日

みーる
@Lt0616pv
2026年2月25日
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下
アンディ・ウィアー,
小野田和子
下巻も最高におもしろかった。ロッキーとの出会いからアストロファージを喰うタウメーバを入手。そこからヘイルメアリーの故障やロッキーとの別れ、再び迫る試練。そして、素晴らしい落としどころのラストシーン。全く飽きずに読み進められた。 過去パートでグレースがヘイルメアリーに乗るまでを描くことで、現在パートのグレースの人物像が深まっていた。 特にグレースがヘイルメアリーに乗るまでの流れに驚いた。何かのトラブルがありグレースが志願するんだろうなと思っていたからだ。それどころか、作中どんな状況でもユーモアとポジティブさを失わなかったグレースが「ヘイルメアリーに乗りたくない、死にたくない」とストラットに懇願する。そりゃそうだよなと。死を確約させられる逃れようのない恐怖を目の前にして冷静でいられる人なんていない。そのつもりもなかったのならなおさら。その事実を思い出してもなお、地球のために今できることを頑張るグレースに元気をもらえた。ストラットが手段を選ばないのもわかっていたが地獄に堕ちる決意をしてまでグレースを指名する決断をした。賛否はもちろんあるがストラットにもやはり確固たる信念があり、素敵なキャラクターのひとり。 そのほかにもヘイルメアリー打ち上げに関わる様々なキャラクターは変わり者だが、それぞれの信念を持っていた。 この作品に悪い者は出てこないのも清々しい。 後半、タウメーバがアストロファージを喰べることが判明する。ストラットも「戦争は食糧の奪い合いが本質」と言っていたように、どの生命体でも生きるためには「食べること」は必要不可欠なのだろう。ラストでもタウメーバは食べれるのでは?と灯台下暗し的な展開もあった。 また、タウメーバが窒素に弱いという弱点を免疫の観点から考え、タウメーバを進化させた展開。読み手にも納得感があり、「その手があったか」と驚かされた。常に科学に基づいて推論と実践を繰り返し行う展開のため、今何が問題で何のために何をしているのかが非常にわかりやすい。 ロッキーのキャラクターも素敵だった。異星の生命体だと言うことを忘れてしまいそうなくらいグレースとの息はピッタリ。爆風から身を挺してグレースを守ろうとしたロッキー、そんなロッキーを必死で治療するグレース。別れのシーンで憚らずもグッときてしまった。キセノナイトを克服したタウメーバが船内に漏れ出している場面では、問題を解決したグレースが地球に帰還することを諦めて、ロッキーのことを助けに行くくらい2人の友情は固いものだとわかる。バディものとしての要素はあくまで副次的ではあるが、何もかもが違っても「科学的基盤」を通して 2人の友情がとても丁寧に描かれていた。 登場人物の描き方、物語のテーマ、展開、どれをとっても素晴らしい作品だった。SF はフィクションなだけあって奇抜な設定をしたりスケールを大きくしたりすることもできてしまう。 それが故に広げた風呂敷を畳むことができず、読者の納得感が伴うような展開にもっていけなかったり主人公のキャラクター像が浅くなってしまったりする危険性がある。SFの醍醐味は納得感のある展開と現状を打破するカタルシス、そして愛着の持てるキャラクターにあると思う。本作では、風呂敷を広げておいて、中心的に描かれることはグレース博士の魅力とロッキーとの友情である。途中、「地球はもうどうでもいいや」と思うくらいにはヘイルメアリーの2人の関わりに夢中になる。もちろん当初の目的である「地球を救うためにアストロファージをなんとかする方法を探すこと」からブレてはいない。まさに「サイエンスフィクション」の王道のような小説。科学を基盤とし、ワクワクさせる展開や固有名詞の数々、ヘイルメアリーの世界観に没入させてくれた。 1ヶ月かけてゆっくりと読み進めた。 その甲斐があった素敵な小説であった。 しあわせ、しあわせ、しあわせ
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