春束 "風と共にゆとりぬ" 2026年3月1日

春束
春束
@harutaba
2026年3月1日
風と共にゆとりぬ
確かに面白かった。オクラのエピソードでは腹を抱えて笑ったし、筆致の巧みさには舌を巻いた。後半はややだれていたように思うが、これだけの分量のエッセイを最後まで読ませる筆力は圧巻だった。 だからこそ、『正欲』『生殖記』を書き切った作者に期待していた、一定水準以上の人権感覚に基づく、有害な規範を再生産しうる表現への慎重さが欠けていたことが残念だった。 女性脳/男性脳という件の眉唾話に始まり、「無邪気」なホモソーシャル的連帯や、薄らと漂うジェンダー規範など、一つ一つをとってみれば些細な描写でも要所要所で積み重なれば役満である、という印象。 期待値が高く、ずっと読むのを楽しみにしていただけに、手元に長く置いておきたくはないな、と思ってしまったのが悲しい。本筋ではない部分での違和感で全てを評価するつもりはないため、今後の著作を注意深く見ていきたい。真摯な作家であると感じているので、エンタメとしての題材としてのみマイノリティを扱っているわけではないと思いたいし、そう信じさせてくれるとまだ願っている。
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