のーとみ
@notomi
2025年3月14日

11文字の檻
青崎有吾
かつて読んだ
青崎有吾「11文字の檻 青崎有吾短編集成」読んだ。青崎有吾による、現在単行本未収録のミステリ短編のほとんどを集めたノンシリーズの短編集。東京創元社以外の雑誌やアンソロジーに収録されてたモノも集められてる中、FGOのアンソロジー収録の「暗黒犯罪天楼マンハッタン」が未収録なのは残念だけど、まあ持ってるからいいやw しかしFGOは色々権利関係が難しいっぽい。
で、収録されてるのはショートショートが3編、いわゆる短編が3編、長めの短編が1つに、書き下ろしの短めの中編が1編の計8編、全部傑作。しかも方向性は全部バラバラ。「噤ケ森の硝子屋敷」のような純然たる本格ミステリもあれば、「前髪は空を向いている」のような日常系ミステリの手法で書いた青春小説もあって、「クレープまでは終わらせない」のようなSFもあるし、「加速してゆく」のような実際の事件を下敷きにしたミステリもある。で、全部面白い。アイディア以前に、文章がほんと良いのだ。これだけリーダビリティの高さと個性を両立させることができる作家は珍しいと思う。
その読みやすくも端正な文章で書かれた百合小説にして、ハードボイルドであり、ミステリであり、アクション小説でもある大傑作「恋澤姉妹」が読めるだけでも、この本は買いだと思う。自分たちに少しでも関わろうとする者は全員殺してきた二人の少女と、彼女たちを探す殺し屋の少女の物語。謎と恋愛が見事に融合して、新しい時代のシスターフッド・ハードボイルドが出来上がってる名品。ああ、これ1時間くらいで実写化しないかなあ。浜辺美波×森川葵と西野七瀬×広瀬すずでどうだw
更に書き下ろしの「11文字の檻」がまた上手い。パスワード当てと監獄モノを合体させた、法月綸太郎風味の、変格本格ミステリ。文字と小説とゲームについての考察自体がミステリになったような、ある意味実験作だけど、青崎有吾の文章で書かれると、妙なリアリティが生まれるから面白い。ものすごく変な小説なのに、とても普通に読めてしまう。「刑務所のリタ・ヘイワース」というか「ショーシャンクの空に」以上の爽快感は、これが脱獄小説じゃないからだろうな。
ということで、とにかく読むといいよ。真っ当で読みやすくて、でも明らかに変という離れ業がいっぱい楽しめるから。
