
Miyoshi
@miyoshi
2026年3月1日
精選女性随筆集 幸田文
川上弘美,
幸田文
読み終わった
——おてんばで、かわいらしくなくて、そしてすこしかわいそうな子、というのが子供の時の私に与えられていた評価だった。
はたきの掛けかたから豆腐の切りかた、はては性教育まで「女親から教えられそうなこと」を全て父の幸田露伴から習った少女時代。
魚屋を真似て文房具で庭の金魚をおろしたり、吾妻橋と船の隙間から隅田川に落っこちたりしていたかと思えば、女学校では美人な正枝さんとラヴレターを寄越した滝沢さんとの間でエス(女学生同士の特別に親密な関係)に思いを馳せたりし、大人になり家庭を持つものの離婚して子づれで露伴の家に戻り、そのうち始まった戦争のせいで「平ったく」してもいられなくなり、やがて戦火の中で病床につく露伴を看取ることになる。
露伴との最期の時間を書いた「終焉」は泣いた。第三者にはとても理解できない厳しさと烈しさで交わされる親と子の、そのやり取りの緩急に揺さぶられた。戦火から避難させようとする幸田文に「死に時のいつは計り得べきではない」と動かない露伴、それでも「死なれたくない、怪我もさせたくない、生きていてもらいたい」とぶつかる文、交わされることばは常識では測れないけれど、やはり親から子への教育であり、それは、はたきの掛け方を徹底的に教える冒頭の露伴の姿と一貫して変わらないものだった。