勝村巌 "宮本常一" 2026年3月1日

勝村巌
勝村巌
@katsumura
2026年3月1日
宮本常一
宮本常一
木村哲也
昭和に活躍した山口県出身の民俗学者、宮本常一について、影響を受けた人々との関連から読み解いていくという新書。 宮本常一に影響を与えた柳田國男から、宮崎駿、スピッツの草野マサムネなどの幅広い人脈で宮本常一との関連を読み解きながら、宮本常一の活動を紹介していくという内容。 1930年台から亡くなる1981年まで日本の各地をフィールドワークし、旅に行きて、現地に赴き現地の生の声を収集しものを考えた人。 ゲンロンの人文ウォッチというYouTubeの配信番組で植田さんという人が紹介していたので、読んでみたら大変に面白かった。 最近は村田らむや丸山ゴンザレスの裏社会系のルポを好きで聴いているが、こういう仕事は見方を変えれば、民俗学的なフィールドワークと言えるな、と感じており、宮本常一との関連で同列に楽しめるということは、そういうものが個人的には元々興味のあるところなのだな、と感じた。 本の中では同じような民俗学者としてフィールドワークのあり方を宮本常一の手法に影響を受けた網野善彦や谷川雁などが挙げられていた。また、本田勝一や司馬遼太郎との関連についても、大変に面白い関係性が著作や日記の全文検索から示されており、興味深かった。 日本の歴史は教科書的に士農工商という分類があるくらい、農業に職業が一元化されるきらいがあるが、非農業系の仕事というものも大量にあったわけで、それはいわく、漁業やそれ以外にも工芸の職人的な仕事であったりしただろう。 例えば漆塗りの工芸には漆を塗布する塗師の手前には漆を採取する人々があったり、木で持って器や箸などを削り出す木地師というような職業もあった。山の民には定住以外の多様性があったはずだ。 炭焼きの職人もあったはずだし。 そういう忘れられた日本というものに目を向けてフィールドワークを重ねていった奇跡が、それに影響を受けた学者たちの言葉や著作などから客観的に述べられていて、宮本常一を今、読むことについての意義を強く感じさせてくれる内容になっていた。 なんて言って宮本常一のことを考えていたら、道に岩波文庫の『忘れられた日本人』が落ちていた。これも何かの縁と思って、一時的に手元において読み始めている。 歴史に残らない人の声を収集する姿勢は編集者としては見習いたいところである。人の話を聞くのはいつでも面白い。
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