きなこ "無理して頑張らなくても" 2026年3月1日

きなこ
きなこ
@kinako2025
2026年3月1日
無理して頑張らなくても
無理して頑張らなくても
チェ・ウニョン,
古川綾子,
大原由衣,
植田たてり
原題「애쓰지 않아도」 14編の短編集。 とても短い作品もあるが、その中にもきちんと作者の意図が書き込まれているのが見事。 訳者あとがきにもあるが、女性だけでなく子どもや動物などの社会的弱者に寄り添って書かれる作品は、どれも透き通った冷たい水のように、私の喉を流れてゆく。飲めば(読めば)心の奥底に眠っていた、自分でも気がついていなかった傷ついた心も癒される。 彼女の作品はそんな風に心の治療薬のように感じられる。 特に心に残ったのが、「デビー・チェン」「夕暮れの散歩」「ブランコに乗って交わした言葉」「良き時代」 特に「デビー・チェン」は、8、90年代の香港映画が好きな人にとってとても嬉しい内容だと思う。最近その頃の香港映画の俳優の名前が韓国映画や小説によく現れるのだが、なぜだろう?もちろん私にとって嬉しいことに違いはないのだが。 著者の言葉が今回も胸に沁みる。 「大学の新入生だった私は社会構造の残忍さに心を痛めながらも、時間が少しずつ解決してくれるはずだという希望を持っていた。でも時間は何も保障してはくれなかった。この二十年で世の中が少しでも良い方向に向かったとすれば、それは命をかけて闘った人びとのたゆみない努力のおかげだ。(中略)最低限の権利を主張する人に、お前はもう十分に持っている、それ以上要求するなと言う人がいる。相手の機嫌を損ねることなく、迷惑をかけず、自分の意見をアピールするなら可愛らしくやれと言う人がいる。誰かの違和感が嘲笑の的になることがある。より露骨に、より公的なやり方で、弱者を窮地に追い込む人がいる。人間性の基準値が徐々に下がりつつあると感じる。私はもう、時間が経てば多くの物事が自然に良くなるとは信じていない。ベストを尽くさなくては。」 次は長編を執筆中だとか。訳者同様にとても楽しみだ。
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