願わくば海の底で

3件の記録
- acco@aco_spc0322025年6月1日読み終わった借りてきた予備知識を全く入れずに、図書館で借りた。 1話と2話を読んだところで「高校美術部を中心にした青春ミステリ」と思った。 その後、何日間か本を読む時間がなく、きのうと今日で残りのページを一気に読み進め、さっき読み終わった。 青春ミステリではなかった。そして、この物語はフィクションだが、起きた出来事は現実にあったことだった。 あの大きな出来事の最中に私は彼らと同じくらいの年齢で生きていたけれど、起きたことの全てを映像や写真でしか知らない。体感していない。だからか、他人事と思ってはいけない出来事だとわかっていても、風化していた。毎年,その日が来るとテレビやネットを見て思い出すが、完全に過去の出来事になっている。 その自覚はあるが、もはやそこに何も感じなくなっていた。 私は私の日常に毎日精一杯で、忘れてはいけないこともみんな忘れてしまう。 菅原くんのように。 この物語は事実の上に作られているが、登場する人たちは架空の人物だ。 でも、その内の誰かが、フィクションじゃないかもしれない。 そんな可能性が、確実にある。ゼロとはいえない。 その事実に胸が詰まる思いがした。 それは自分のために込み上げた罪悪感で、私はそれを誰に向けるでもなく漠然と沸いた浅い懺悔と一緒に、海の底に沈めた。 そんな読後感の中にいる。息が詰まる。 せめてこの感覚は、忘れないでいたい。