多読術 (ちくまプリマー新書)

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- 高卒派遣社員@hidari_s2025年4月10日読み終わった松岡正剛といえば言わずと知れた読書家の頂点に君臨するような人物。ちょっとお堅い人文書について検索すると、かつて彼が書いていた千夜千冊のウェブサイトに行きつく。生前ホームグラウンドにしていた編集工学研究所の書棚を見れば、そこはもはや小さな宇宙のように見えてくる。到底追いつけるはずもない。 そんな彼が多読術について語ったのが本書である。聞き手の質問に答える形で、生い立ち・読書遍歴・読書論が展開される。 読書論といえばロジックで塗り固めたような読書本であるアドラー著『本を読む本』が真っ先に思いつくが、松岡の語る多読術はより感覚的で、体感を伴ったものといえる。 読むことを食べることに例え、少食でもいいし、多食でもいい。偏りも大歓迎。ただし、本を読むことは毒にも薬にもなるし、毒にも薬にもならないこともある。とにかく本(活字)が身近にあることが大切だという。 ほかにも全集を読むことをピッケルを持って山頂を極めることに例えるなど、あちこちで読書を何かに例えている。この連想力・発想力も彼が説いている「編集」なのかもしれない。 松岡の幼少期は、呉服屋の倅として経済的にも文化的にも非常に恵まれた家庭だったことも語られていた。仮に自分がその環境に生まれていたら、彼のようになれたのだろうか。 いい意味で読書のハードルを下げ、多読人口を増やす効能のある一冊だと思った。