バウルを探して〈完全版〉

3件の記録
- うみこ@umico52025年4月28日読み終わった本を開くとまずラロン・フォキルの詩。そして中川さんの写真で一気に異国の喧騒と静寂の中に投げ出される。そこから始まる川内さんの語り。国連を退職後にバウル(とは何なのかはぜひ読んでいただきたい)を探しにバングラデシュへ旅する川内さん。行動力と度胸があり、知的でユーモアも感じる文章はするする読める。海図なき海を行く川内さん、中川さん、通訳のアラムさん。困っている人をほっとけないベンガル人。カレーのスパイスをひく女性たち。人が溢れる列車。テツガクが好きなベンガル人。今もフリーダムファイターなベンガル人。私はきっとバウルを探しにバングラデシュを旅することはない。でも、だからこそこうして本を開く。本の中ではバウルを探してバングラデシュに行くことができる。メラに参加した気分になれるし、知らなかったベンガル地方の歴史や人々の息遣いまで知れる。それはなんだかすごいことなんじゃないかと思った。開発と援助、発展途上国と呼ばれる(その名称もエゴがすごい)国の暮らし。ベンガルの風。 「自分の中に抱える欺瞞。なりたい自分になれないという、やるせなさ。あるべき自分はすぐそこの鏡に映っていても、自分自身の手はそこに届かない。…」あーまた!たまにある…読み始めたときには読み終わって号泣してるとは思わなかった。 そして川内さんの文章、中川さんの写真をまとめる矢作多聞さんの装丁が素晴らしい。表紙が仕上げられておらず、その上に寸足らずな長さのカバー。大きめの帯のよう。綴じ糸の色がカラフルなの初めて見た。紙の手触り、ペタンと開く綴じ方。異国を感じるタイトルページ。心をかけて、手をかけて、この本を読者に渡そうという三輪舎さんの心意気も感じる。こういう本に出会えてしまうと、やはり情報としての本ではなく、物としての本が好きだと思う。身体に栄養が必要なように、心にもこんな栄養が必要で私は今日も本を開くのだと思う。アリオさん、ここに届いてるから、書いてほしい。「世の中にぽつん、ぽつんと残っている自由とか希望のカケラみたいなものを」書き続けてほしい。と祈りのように思う。