ここじゃない世界に行きたかった

11件の記録
- sankaku@ta____ki32025年3月11日かつて読んだ@ 図書館アメリカ在住の、女性文筆家によるエッセイ集。ネットでよく目にする社会的にも取り沙汰される大きな問題のいくつかが、生活の中での小さな疑問のような形でやさしく切り取られ、こちら側に寄り添っているような文章がとても心地いい。 一方で、私の知らなかった世界、場所や、人や、考え方についても数多く取り上げられていて、もっと知りたい!と思わされたし、あぁ、なんでこんな素敵な場所や人について私は知らなかったんだろう、と静かにため息をついたりした。 時代の移り変わりと共に、価値観や人々の望む生活スタイルは変化を遂げている。そんなこと、きっと今を生きる人みんなが承知の上で今やこれからを考えているし、私だってそう思ってはいたのだけれど、読むことで消化されたことがいくつもあった。 「人の話をちゃんと聞いていませんでした」 に関してはそのタイトルだけでも自身に心当たりがありすぎて、思わず笑ってしまった。常に話しすぎないよう気をつけてはいても会話に登場した単語から様々なことが頭を巡り、話の繋がりをほとんど無視したことを突如口にするので、よく友達でいてくれるよな……と少ない友人たちに尊敬の念を抱くほどだ。 人と出会い、会話をし、相手の言葉や心の声に耳を傾けること。今すべきことは、大きい問題を一気に解決することよりも、今生きているひとりひとりが、それを意識していくことなのではないだろうか。 はじめに、で、『「異なる視点を持つ友人が一人いる」──それくらいの感覚で』と書かれているが、この本を読む上で持つべき心持ち、という以上に、そもそも共に生きているひとりひとりは異なる視点を持つのだと分かってさえいれば、世界はもっと優しく、柔らかくなれる気がする。 今生きる「ここ」と 理想とする「ここじゃない世界」。日本と世界、そして、目の前の暮らしとインターネット。 「ここじゃない世界に行きたかった」と感じた事がある人も、ない人も、ぜひ、一度読んでみてほしい。