SFマンガで倫理学

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- 一世@seedo812025年3月8日読了。哲学の中でも、人間の行動や道徳、「人としてのあり方」について理論的に探る倫理学。そのテーマを 「SF漫画」を引き合いにしながら考える というユニークなアプローチを試みた一冊です。 漫画のストーリーや設定の裏にある倫理観を問い直すという方法は、難解になりがちな倫理学のテーマに入り込む「きっかけ」を提供するという点で興味深いものがあります。 実際に取り上げられている作品は、『火の鳥 生命編』『寄生獣』『BEASTARS』『人造人間キカイダー』『銀河鉄道999』『進撃の巨人』など、日本のSF漫画の中でも哲学的なテーマを持つ作品が選ばれています。 ただし、こうしたアプローチの特性上、漫画を知らない読者にとっては理解が難しくなりがちな部分もあります。また、倫理学の学問的な解説としても、漫画評論としても、どちらの側面においてもやや中途半端な印象を受ける部分は否めません。もう少し深い考察や分析が加わっていれば、より充実した内容になったかもしれません。 とはいえ、本書を通じて、日本の漫画が単なる娯楽ではなく、ひとつのアート表現であり、哲学的・倫理的なテーマを多く内包していることを改めて認識できる点は面白いと感じました。 ● SFマンガで倫理学 ―何が善くて何が悪いのか(萬屋博喜、2024年、さくら舎)