東京美術学校物語

東京美術学校物語
東京美術学校物語
新関公子
岩波書店
2025年3月22日
7件の記録
  • 勝村巌
    @katsumura
    2025年11月29日
    明治から昭和にかけての美術界の動向が東京藝術大学の前身である、東京美術学校の歴史を中心に語られる本。 1876〜83までの工部美学校に続いて1889〜1949までの東京美術大学のたどった歴史をコンパクトにまとめている。 日本の美術の歴史を国粋主義的な日本がの流れ(岡倉天心やフェノロサ→横山大観などの日本画的傾向)と海外留学経験のある国際主義的な流れ(黒田清輝などによる洋画的傾向)の対立で読み解く流れは、それぞれの作家を明治〜昭和初期の作家についてそれぞれ調べるにおいて、なんとなく知ってはいたが、東京美術学校における人事の流れなどを読み解くと非常にわかりやすく、面白かった。 国際社会において、海外に対峙する日本の独自性を日本的なアイデンティティの形成として目指した岡倉天心的な考え方と、海外の文化を取り入れて折衷しつつ認めさせる黒田などの思想が対立するのは必然な気がするが、黒田の代表作と言える『知情感』のコンセプト作成に岡倉が関与していたのではないか、という見立ては非常に面白かったし、その背景が金箔による絶対空間であるがため、ヨーロッパでは下書きとみなされてしまったかもしれない、という点などは大変面白かった。 当時の万博などへの出品目録のデータなどもあり、そこから読み取れるもの色々とあり、大変面白かった。 それ以外でも、資料から読み取れる各プレーヤー(歴史的人物)の思惑などの、感情的側面が想定と共に記されているのも面白かった。 浅井忠なんかの日記を基にした、万博の日本展示への絶望的な否定感だとか、官展や文展、そのほかの在野団体の感情のもつれなど、歴史というのは人間の感情に結びつくと途端に下世話な面白さを帯びるな、と感じた。 岡倉天心など、心意気は良いんだが、下半身がだらしないとことか、いくらいいこと言っていても、それでいろんな物事が振り出しに戻ったりして、いかがなものかとも思うし、横山大観なんかの戦時中の国粋的な感覚からの戦意高揚に向けての舵取りなど、なかなかシビアなものがあった。 とはいえ、そういう点を画業と合わせて肯定的に捉える文章の説得力もあり、そういう見方もあるのか、と思った。 とにかく団体やイデオロギーなどの衝突や小賢しい政治的な思惑で人を失脚させたりとか、そういう話も多く、こういう人間関係は昔から変わらないのね、とも感じた。 作品ばかり知っていたさまざまな明治以降の伝説的作家の割と赤裸々な感情的思惑や失敗や成功なども記されており、大変面白かったです。
  • 日本が西欧の文化が入っていく中でどのように日本美術のジャンルを確立して、今の藝大が出たかを知ることができる。 岡倉天心『茶の本』と合わせて読むと理解が深まった。
  • orange10s
    @orange10s
    2025年4月2日
  • 喜多倉
    喜多倉
    @kitakura473
    2025年4月2日
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